もう駄目だ。
あの日の夕刻から私の胸は
張り裂けんばかりだ。
こんなことなら先生と「秘密」何て
持つべきでは無かったのだ。
「私は生徒と恋は紡ぎません」
「紡ぎませんが、」
「秘密は持ちましょうよ」
そう云って先生は私に接吻をされたのだった。
それから数日間はくちを開くのも憚られたし
誰の前でも、好天でも雨天でも、口数が少無くなって居た。
堪らない!こんなこと。
呼吸が上手に出来無いような気がする!
先生が教員準備室に入ったのを空虚な目で追い
私もあとにつづいた。
先生は、さして驚きもしておられぬようだ。
「先生・・・桜子先生」
「どうしましたか。何か、質問ですか?」
「先日の秘密のことですけれど、」
其処で、ようやく私の目を見据えて下すった。
アア先生!
震えてこの場に崩れ落ちそうだ。
「秘密を、もうひとつ落として下さい」
私は云うが早いか両眼を閉じた。
刹那に先生は、先日の接吻より深いものを私に下さった。
人間同士がこんなに互いの咥内を分け合えるものかと
妙に冷静な脳内で感じ取って居た。
「・・・こんなに秘密ばかり持ちたがって、」
「・・・?」
「それ相応の覚悟は、出来て居るのでしょうね?」
「はい・・・はい。先生」
返事を差し上げるとふたつの影が又、ひとつになったようだ。
もう私には、秘密を持つことで、精一杯だ。
●私に、もっと。
先生&生徒の秘密の花園もの。
『喪失と成就』の一応続きです。
俺の周囲に居た先生と呼ばれる人々は
割りと校内で接吻してたみたいですヨ。
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- 2015/08/26(水) 16:37:00|
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